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猫と犬とカラス―頭が良いのは②

前頭葉の発達

 近年、脳科学では「前頭葉」というキーワードの注目度が高まってきました。ご存知ではない方のために簡単に説明しますと、大脳には左右の側頭葉と前頭葉、後頭葉というエリアがあります。このうち前頭葉は文字通り頭の前の部分で、さらに額に近い半分を前頭前野と呼びます。この部分が、大脳全体の司令塔の役割を果たしていることが分かってきたのです。人間の意欲、計画、工夫、実行などに関わるすべては、前頭前野(省略して前頭葉ともいう)の働きによるものです。

 

 つまり、総合的な頭のよさというものは、前頭葉の性能にかかっているといってよいでしょう。昔、治療のため前頭葉を削除された脳疾患の患者が、ほとんど廃人に近い状態になって一人では生活できなくなってしまった悲劇がありました。前頭葉は、まさに人間が人間らしく生きるためになくてはならない器官なのです。

 そして、前頭葉は人間だけのものではなく、ほかの動物にもあります。ただ、人間の前頭葉は他の動物に比べて、脳に占める割合が特別大きいのです。そこで、本題に戻りますが、人間以外の前頭葉の割合はどうなっているかを見てみましょう。

 ドイツの脳解剖学者ブロードマンによれば、ヒトやサルの仲間、犬猫などの前頭前野皮質が大脳皮質全体に占める割合は次のようになっています。(※本データは孫引きのため、残念ながらカラスについては不明です)

前頭前野皮質が大脳皮質全体に占める割合
   ・ヒト 29%  ・チンパンジー 17%  ・テナガザル 11.5%
  ・キツネザル 8.5%  ・イヌ 7%  ・ネコ 3.5%

 前頭葉の比率はヒトが別格で、それに続く霊長類も種によってかなりの差があります。そしてキツネザルになるとイヌとそう変わりません。脳化指数ではあまり変わらなかったイヌとネコですが、前頭葉の脳に占める割合ではイヌがネコの2倍になっています。

 犬派の方はさぞ溜飲を下げたことでしょうが、猫派の方のためにあえて言いますと、犬の前頭葉は集団で狩りをし、グループの秩序を保つために、コミュニケーション能力が発達したせいだと思います。単独で行動する猫は、協調性に必要な脳(前頭葉)の発達は不十分です。しかし、何もかも自己責任で行うため、独立心、警戒心、瞬時の判断力、気持ちの切り替え…などのEQ(こころの知能指数)が発達したのではないでしょうか。

閑話休題②

 前頭葉の発達したチンパンジーとゴリラは「ヒト科」

 主に欧米(キリスト教圏)の学者は伝統的に、人間と他の霊長類との間に太い線を引きたがりました。そのため、「脳の重さ」で説明がつかなくなると体重との比率を持ち出し、「道具を使う唯一の動物」で矛盾が生ずると、「道具を作る唯一の動物」として、人が唯一無二であることの定義を修正してきたのです。

 しかし、今では分類学上、〔霊長目>ヒト科>ヒト亜科〕の中に、ネアンデルタール人や直立猿人だけでなくチンパンジーやゴリラも入っています。また、オランウータンも〔霊長目>ヒト科>オランウータン亜科〕として分類されています。長い間かかってやっと、これらの大型類人猿が「サルよりもヒトに限りなく近いこと」を認めるようになったのです。

 そして、脳科学でも近年、「自己」という概念がそれらの大型類人猿にのみ認められることが、実験によって確かめられました。前頭前野の大脳全体に対する比率を見れば、チンパンジーはキツネザルの2倍。ヒト(現代人)はチンパンジーの1.7倍ですから、やはりチンパンジーが一般のサルよりも私たちに近いことはうなずけます。

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