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「三毛猫はメス」のダブル不思議

 「オスの三毛猫はいない」とか「極めて少ない」と言われていることをご存知ですか? 実は三毛猫は遺伝学上、メスしか生まれないというのです。ところが、実際には稀にオスの三毛猫が存在することも事実です。本ページのタイトルを「ダブル不思議」としたのはそのためです。

 

 まずは第一の疑問、「なぜ三毛猫は皆メスなのか」についてですが、生物学の苦手な筆者が学問的な解説をするのは無理気味です。でも、失礼ながら本サイトの読者も、本格的な遺伝学の話は説明されてもわからない方が多いでしょう。そこで筆者も「多数派」の方々に合わせ、「身の丈に合った説明」ということでご容赦願いたいと思います。

 三毛猫はご存知のように、白、オレンジ(赤・黄)、黒の3色の毛を持つ猫で、模様のパターンや各色の面積比率はさまざまです。こうした多様性が生まれるのは、3つの毛色が別々の遺伝子によって支配されていることが関係しています。そして、この3つの遺伝子の力関係によって、三毛猫として生まれるためには「メスである必要性」が生じるのです。

オレンジ遺伝子は黒遺伝子を働かなくする

 その力関係とは、「オレンジ(O)遺伝子は黒遺伝子を働かなくする」ということです。すると、「オレンジと黒は共存できず、三毛猫は存在できない」ということになりますが、オス猫ではそのとおりです。でも、メスには三毛猫が生まれるのです。それはオレンジ遺伝子が、オスかメスかを決定するあのXX(メス)・XY(オス)遺伝子の中の「X染色体」上にあるからです。…と言われても、ますますわからなくなりましたね。

 さて、X染色体にはオレンジ遺伝子があるといいましたが、当然それを持たないX染色体もあります。オスの場合はX染色体が一つしかないので、オレンジ遺伝子を持つ染色体XOと持たない染色体Xoの2種類に分かれます。三毛猫になるためにはXOが必要ですが、すると黒遺伝子があっても働かなくなります。オス猫に三毛猫が生まれないのは不思議でも何でもないのです。

 問題はメス猫です。メスにはX染色体が2つあるため、オレンジ遺伝子を持つ数で分けると、2個〔XO,XO〕、1個〔XO,Xo〕、0個〔Xo,Xo〕の3種類の染色体になります。このうち〔Xo,Xo〕〕タイプはオレンジがないので三毛にはなりません。また、〔XO,XO〕タイプもオレンジ遺伝子が黒遺伝子を働かなくするので、やはり三毛になりません。

X遺伝子の不活性化によって「ありえないこと」が起こった

 ところがオレンジ遺伝子が1個だけある〔XO,Xo〕タイプには、三毛猫が生まれるというのです。不思議なのは、「三毛猫が存在すること」それ自体でした。

 これには哺乳類に起こる「妊娠初期でのある現象」が関与しているのだそうです。それは受精卵が細胞分裂を繰り返して胚になったある時期に、2つあるX染色体の片方が不活性化してしまうことです。どちらの染色体が不活性化するかは2分の1の確率です。遺伝子はでXOタイプとXoタイプの2種類に分かれた後も細胞分裂を続けますから、オレンジ遺伝子〔あり/なし〕の細胞が一つの体の中で共存することになります。するとどういうことが生ずるでしょうか?

 XOタイプの遺伝子を持った細胞群からは、黒を抑えるためオレンジの毛が生えます。一方、Xoタイプの遺伝子を持った細胞群は、オレンジがないため黒の毛が生えます。さらに別の染色体に白の遺伝子があれば、三毛猫の誕生というわけです。こんな説明でわかりましたか? 分からなくて悔しいと思う方は、何度も読み返してくださいね。私は元になる参考文献を3回読んで、やっと理解できました。

染色体異常で生まれるオスの三毛猫

 最後にオスの三毛猫がごく稀に生まれる理由についてですが、上の「X遺伝子の不活性化」で頭を悩ませたあとでは、拍子抜けするほど単純です。染色体異常のため、体はオスなのにX遺伝子を2つ持って生まれるのだそうです。後の仕組みは上の説明通りです。メスの染色体を持って生まれるオスがいるのは不思議ですが、数千匹に一匹の確率ですから、「神様の手違い」として片づけるしかなさそうですね。なお、オスの三毛猫はほとんどが子孫を残せないのだそうです。
 ※参考文献:「猫の秘密」文春新書2014年初版

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