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媚びない、美しい、きまぐれ…には理由がある

    猫の魅力は失われない野生にある   猫がそっけないのは…
    気まぐれな猫は好きになれる・なれない?

猫の魅力〔再考〕―犬派と猫派

 

 猫好きの人が第一にその理由を上げるのが、猫のしなやかな肢体と美しい目ではないでしょうか。一方、犬派の人はその容姿よりも、自分にすり寄ってくるその性格の愛らしさを挙げる人が多いようです。そして、「猫は気まぐれ」「そっけない」という感想がよく付け加えられます。

 猫好きの人にとっては聞き飽きた「悪評」ですが、それにもめげず猫派はその美しさにうっとりするのです。では、「猫は犬よりも性格的にあまり好かれないのか」という問題は後回しにして、それでも、いやそれだからこそ猫の美しさに魅せられるその理由を考えてみましょう。

猫の魅力は失われない野生にある

 猫はあらゆる家畜(人間にとって有益であるがゆえに飼育された動物という意味)の中で唯一、向こうから人間に近づいてきた動物です。穀物を荒らすネズミ退治に便利なために、人間は無条件で猫を受け入れ、やがて愛玩用として居住空間にまで入れます。しかも、猫は人間の手による品種改良がほとんどなく、本来の野性を失うことなく、また人間に媚びることもなく、数千年も愛されてきたのです(注:人間と暮らし始めたのは約1万年前ですが、はっきり愛玩用として意識されたのはエジプト時代)。

 その点で犬は猫と大きく異なります。犬は、狩猟時代にハンターとして人間のお手伝いをし、牧畜が始まると牧羊犬として人間のパートナーになりました。その間、その仕事にふさわしい犬が何代にもわたって選ばれ、交配されて今日の多様な犬種が生まれています。例えば、ダックスフントはもともと穴ウサギの巣に入るために作られた犬種です。今では愛玩用としてミニチュアダックスフントが相変わらず人気者ですが、初期の犬はオオカミをも追い払う体格と勇気がなければ務まらなかったはず。遠い昔のご先祖様が泣いていますよ。

 というわけで、猫の魅力の第一は、失われないその野生にあります。猫と同類のライオンやトラも赤ちゃん時代は可愛いのですが、3か月も経てばもう立派な猛獣です。猫はいつまで経っても猛獣にはならず、その動きは天真爛漫そのもの。体が小さく、しかも人間を恐れないことが、野性味を失わず人間に愛される武器となったのです。

 さて、猫の美しさは何といってもあのしなやかさにあります。まるで関節が外れているのではないかと思うほど、体がくねくねと曲がり、しかも動きは実に優雅です。猫が多くの芸術家に愛されるゆえんです。ある人はこれを、「神様が私たちにプレゼントしてくれた造形」というかも知れません。なるほど、そうか、と思いたくなりますが、この優美でしなやかな動きこそは、猫がネズミを取るために獲得した究極の到達点なのです。

 猫は単独で獲物を狙うハンターです。まずは息を殺してネズミを待ち伏せし、見つけたら気付かれないように抜き足差し足で限界点まで近づき、そして意を決すると持ち前の瞬発力でダッシュして一気にネズミを仕留めます。動きにまったくムダがありません。まるで一流の書家が書く一文字のようです。このしなやかさと究極の俊敏性を可能にした体型が、猫という存在であり、人を魅了する根源なのです。

 猫の魅力はその肢体とともに、あの妖しげに光る目にもあります。眠っている時にはないようにさえ見えるあの目が、パッチリ開けると丸くなり、瞳が怪しく輝きます。目が光るのは夜行性ハンター特有の現象で、わずかの光でも目に最大限の光を取り入れて、優れた聴覚と嗅覚をも動員しながら獲物を捕らえるのです。猫の目が他のハンター、例えば犬などと比べて異なるのは、眼球が極限まで大きく進化している点です。小顔に大きな目が輝いているのも、猫の造形的な魅力として欠かせないものです。

猫がそっけないのは…

 ここまで「猫礼賛」に終始してきましたが、犬派に不評の「そっけなさ」と「気まぐれさ」についても述べておきましょう。まず、猫のそっけなさについてですが、確かに犬と比べれば、「猫は実にそっけなくてつまらない」と思う気持ちもわからないではありません。でもそれは犬が特別なのです。ウサギやヤギ、牛、馬などと比べて猫が特にそっけないとは言えません。犬はもともと集団で狩りをする動物で、リーダー以下序列が決まっています。リーダーに従うのは絶対で、生き延びるためは序列を守ることが必然的帰結なのです。

 人に飼われた犬は飼い主をリーダーと認識しますから、飼い主に媚びます。時々しつけを誤った人が、飼い主のいうことを聞かないわがまま犬を作ってしまいますが、それは犬に序列を誤認識させたためで、正しくしつければ実に従順で頼もしくも可愛い犬になるのです。

 犬のこの従順さは、悪い意味にもよく使われます。権力や職場の上司などの言いなりになって極端に媚びる人が、「○○のイヌ」などと陰口をたたかれるわけですが、これも犬にとっては迷惑なたとえです。犬は主従の関係を作ることによって、組織全体で生き延びようしているだけで、出世のために、心の中でバカにしながら媚びている人間とは違うのです。

 ところが猫は単独ハンターですから、お互いに対等です。上司に媚びる必要もなければ、部下を持つ必要もありません。縄張りさえ守られれば、あとはあいさつ程度のコミュニケーションがあれば十分です。これを「そっけない」と言われても、「私がなぜ媚びなきゃならないの?」と、猫がしゃべれたら反論するでしょう。猫の媚びない美しさは、人間の女性でも参考になるかもしれません。ただし、猫好きの人でも、相手が人間だと「媚びだらけの女」に夢中になるかもしれません。まして、犬派の方、人間の媚びにはだまされないように。

気まぐれな猫は好きになれる・なれない?

 最後に猫の気まぐれさについてです。これも猫派の人なら「そこが可愛いんじゃないの」と言うところを、犬派は「だから好きになれないんだよ」と言います。まあ、これでは水掛け論になりますから、やはりハンターとしての資質の違いに戻りましょう。

 オオカミを先祖とする犬は、集団で暮らし、集団で狩りをします。そのため、犬同士の序列と共にコミュニケーション能力が猫に比べて発達しています。犬が芸を覚えるのも、そうした犬の協調性のお陰です。

 一方、ライオン以外の猫の仲間は単独で生活するのを基本とします。もちろん、狩りも共同で行うことはなく単独です。子供は母親から離れた瞬間から、何もかも自分で決め、自分で行わなければなりません。年一回の発情期以外はまったく孤独です。他の顔色をうかがう必要がないどころか、そうでなければ生き延びられないのが野生の猫族なのです。

 人間と暮らすようになっても野性を失わない猫は、そのために「気まぐれだ」「わがままだ」「マイペース過ぎる」という汚名を着せられることになりました。しかし、自由さを失った人間が、猫を「うらやましい=けしからん」と思うか、「うらやましい=魅力的だ」と思うか、そこのところが分かれ目だと思うのです。まあ、こんな理屈をこねずに、無邪気に「猫は神秘的だね」と言って喜んでいるほうが、幸せかもしれませんが…。 

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