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猫の見えている世界―動き、視力、色彩

   猫の動体視力と立体視能力   猫にはテレビがどう見えているのか? 
   猫の視力は0.1~0.3くらい?    猫は色彩が分かるか?

 人間を基準にして動物の視覚世界をみると、近視、遠視、色覚異常、鳥目などの動物がいる一方、優れた動体視力や夜でも目が見える目などを持つなど動物がいます。どの動物も、生きていく上で必要な能力だけを磨き上げたと考えられるわけですが、猫の場合はどうでしょうか。猫の見えている世界について、動体視力、立体視、テレビの画像、視力、色彩などのキーワードで探ってみました。

猫の動体視力と立体視能力 

 

 猫の動体視力がいいのは、あのちょろちょろと素早いネズミを捕るということを想像しただけでも、誰もが納得するでしょう。猫は動くものにはとにかく敏感で、鳥や昆虫などが飛んでいるのを見つけると必ず目で追い、あわよくば跳びかかろうと身構えます。動きの速いものに対して目と体が反応するのは、狩猟本能なのですね。

 猫が優れたハンターなのは、動体視力だけではなく立体視に優れているからだといわれます。素早く動くネズミとの距離を瞬時に的確にとらえ、持ち前の俊敏な筋肉の瞬発力でとらえるのです。

猫にはテレビがどう見えているのか?

 ところで動体視力の良い猫に、テレビはどう見えるのかという疑問がよく話題になります。人間の目は、1秒に30コマが送られるテレビ画像を、なめらかに連続する動画として見ています。ところが1秒当たりのコマ数がその半分以下になると、静止画像が連続して送られているように見えてきます。一方、動体視力に優れた猫は、1秒30コマでもなめらかな動画には見えない、というのがよく聞く説です。

 ところが、「猫のなるほど不思議学」(講談社・BLUE BACKS)によれば、「臨界融合頻度」という値を測定すると、人間も猫も15~60Hzで、ほとん変わらないというのです。つまり猫も、テレビの画像がなめらかに見えているということになります。半ば常識化されていた俗説はどうもあやしくなってきました。そういえば、筆者の飼い猫も生後4~5か月の頃、テレビに映った小鳥に襲い掛かっていました。卓球の画面などでも、左右に動くピンポン玉を目で追うのを見たことがあります。

 でも、我が愛猫はその後、テレビにまったく興味を示さなくなりました。なぜだろうと考えてみたのですが、TVカメラは通常、動く被写体を追いかけますから、私たちは背景が動いている画像を見ることが多いわけです。人間ならそれを「被写体が動いている」と認識しますが、猫にはそうは見えず、「動かないもの」になってしまうのではないでしょうか。その上、テレビは立体画像ではありませんから、立体視に優れた猫の目には、現実感が全くないのかもしれません。人間のように脳の創造力によって、テレビ画像を現実世界として再構築する能力は、猫にはないのだと思います。

猫の視力は0.1~0.3くらい?

 動体視力がいいのだから猫は目がいいのかと思っていると、実は猫の視力は人間よりもかなり悪いようです。これもどうやって調べたのか知りませんが、視力は0.1~0.3くらいだそうです。見える範囲は15センチから20メートルくらい。2~6メートルが最もよく見える範囲だといわれています。しかも、猫の目の解像度は悪く、少しぼやけて見えているはずです。

 視力を解像力でみると、猫の目の解像力は人間の10分の1程度だそうです。つまり、見えていてもぼんやりとしていて細部が見えないのですね。しかし、猫の目は大まかなコントラストの把握はよいため、静止した物でも輪郭をとらえる能力はしっかりしています。しかも、動くものに対しての感度がいいため、その輪郭のわずかな動きもすぐにとらえることができるのです。

 これは猫と暮らしている人なら、「なるほどその通りだ」と思うでしょう。暗い台所で豆粒ほどのキャットフードを落とすと、猫は即座に反応して転がった先に飛びつきますが、そっと目の前に置いても気がつきません。一度見失った小さなものは動かない限り、なかなか見つからないのです。

 私たちは視力というと、近くの細かいものが見えて、遠くのものの形がはっきり見えることが優れていると考えます。でも、それは総合的な視力という観点では、一部の能力にすぎません。猫はそうした人間が持つ「視力」よりも、獲物や敵をいち早く発見し、そのわずかな動きをも正確にとらえることに特化した、「視力」が優れているといえるでしょう。

猫は色彩が分かるか? 人間とは異なる色の世界

 色が見えるとはどういうことでしょうか。人間の場合、赤と緑と青(光の3原色)を認識する錐状体というものがあって、その組み合わせで様々な色を認識しています。でも、この「当たり前の機能」が動物によっては備わっていないのです。

 犬の視覚はかつて、色が全く見えない灰色の世界だと言われていました。実際はある程度色は見えるらしいのですが、赤を識別する細胞はないということが分かってきました。赤が見えないということは、赤色が混じった中間色も人間が見ているのとはまったく別の色に見えているわけです。ちなみに、牛も赤が見えないそうで、スペインの闘牛士が使うあの赤い布は牛にとっては意味がないわけですね。

 猫はどうかというと、錐状体は犬と違って赤・緑・青の3色を認識するようです。でも、網膜にある視神経の数が人間とはケタが違います。人間の視神経が約120万本に対して、犬猫は約12万~20万本しかないので、精度がまるで違うのです。そのため、猫は赤色がよく見えません。何色に見えているのかは猫に聞いてみないとわかりませんが、黄色(茶)とかピンク色という説があります。

 色彩についても、猫が夜行性のハンターであることが大きく関わっています。暗いところでもよく見える猫には、色の世界よりも、明暗の世界が重要なのです。なにしろ、猫の光感度は人間の6~7倍です。人間にとっては陰影の少ない平板な色彩世界が、猫には彩度は低いが明暗のコントラストの強い世界に見えているのかもしれません。

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